グルタミン酸とイノシン酸

化学の話になりますが、 グルタミン酸は、野菜や醤油などに含まれている旨み成分、 イノシン酸は主に肉類、魚類に含まれている旨み成分。そして、このイノシン酸、動物肉よりもむしろ魚肉に多く含まれます。

例えば煮干は、牛肉・豚肉の数倍のイノシン酸を含み、 アジやサンマも牛肉・豚肉の倍ほどのイノシン酸を含みます。 あと、日本でダシと言えばまず出てくるカツオ節、肉の数倍のイノシン酸を含んでおり、 イノシン酸のダシとしては最強です。

一方、自然な食べ物で最もグルタミン酸を豊富に含んでいるのは、昆布。 この昆布のグルタミン酸含有量は、 主に野菜の旨みと言われるグルタミン酸の中で最もグルタミン酸を多く含む野菜、トマトのおよそ16倍、もう圧倒的キング・オブ・ザ・グルタミン酸です。

もうひとつの旨み成分として知られるのは、グアニル酸。これは、シイタケの旨み成分として知られていますが、 グアニル酸を最も含む食材は乾燥シイタケ。ドライポルチーニも。

つまり、日本人は、外国人に比べてイノシン酸を含め、旨み成分が強いものばかりを食しています。

ところで、旨み成分は相乗効果があり、俗に言われるのは、グルタミン酸10に対してイノシン酸1で、人はとても美味しく感じるといいます。だからこそ、イノシン酸の旨みが強い食材を多々持っている和食は、 その10倍のグルタミン酸を求めて、一見グルタミンまみれ(笑)な傾向を持つのかもしれません。化学合成のグルタミン酸、味の素が日本で生まれたのは、ある意味当然です。

そして、醤油のグルタミン酸含有量は1.5%ほど、100g中何mgとかというレベルでなく、1500mg、とんでもないグルタミン酸の塊です。つまり、グルタミン酸最強調味料で味付けし、イノシン酸最強ダシによって旨みを付与しているのが、和食の基本です。和食の基本的な味の構成は、見事にグルタミン&イノシンの相乗効果です。

これだけでも、和食が洋食などと比較して旨みが強い味付けになっているのは間違ありません。ということで、日本人がいかに強い旨みを日常的に味わっている民俗かよくわかります。余談ですが、納豆を混ぜるとねばねばしてくるの、あれもグルタミン酸の塊。納豆のタレに「昆布ダシ」か「鰹ダシ」か。昆布ダシだと相乗効果は生まれませんので、普通納豆のタレはたいてい鰹ダシ。

一方で、イタリア料理はグルタミン酸の強そうな食材があります。イタリア人はトマトソースを良く使いますが、これもグルタミン酸。 あと、イタリアンでは比較的チーズをよく使いますが、これは昆布に次ぐグルタミン酸食品、あとアンチョビ。こうして見ると、イタリア人の旨み嗜好は、日本人に近そうです。イタリア人も日本人と並んで魚肉をよく食べます。魚肉には、ほかの肉よりも多くのイノシン酸を含んでいることは前述の通り。ということは、その10倍のグルタミン酸を求めて、トマト、チーズ、アンチョビなどでは足りない分のグルタミン酸を探し、組み合わせる必要があります。

そのあたりを今追いかけています。

日本人とイタリア人、その基本が他国よりも強いグルタミン酸嗜好なのではないのか? そのベースが昆布、醤油、塩辛などの日本、トマト、コラトゥーラ、チーズ、アンチョビなどのイタリア。

店名を今月から変えました。

nagoya murata

JAPANESE-ITALIAN

synergy

両者の相乗効果を研究していきます。

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